傷病手当金とは
傷病手当金は、健康保険に加入している労働者が業務外の病気やケガで働けなくなった場合に、生活を支えるために支給される給付金です。公的医療保険(健康保険・協会けんぽ・健保組合)の制度で、雇用保険(失業保険)とは別の制度です。
最も重要な特徴は、退職後も要件を満たせば継続して受給できる点です。病気・ケガを理由に退職した場合でも、在職中に傷病手当金の受給要件を満たしていれば、退職後1年6ヶ月間(支給開始日から通算)受け続けることができます。
① 在職中の賃金の約3分の2を受給できる
② 支給開始日から通算して最長1年6ヶ月受給できる
③ 退職後も継続受給できる(要件あり)
受給条件
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 健康保険への加入 | 協会けんぽ・健保組合などの健康保険に加入していること(国民健康保険は対象外) |
| 業務外の病気・ケガ | 業務外の傷病で療養中であること(業務上・通勤災害は労災保険の対象) |
| 就労不能の状態 | 傷病のため今まで従事していた業務に就けない状態(医師の意見書が必要) |
| 連続3日間の待期 | 就労不能になった日から連続して3日間の待期期間が必要(有給・公休含む) |
| 無給または低収入 | 傷病手当金の額より多い給与の支払いがないこと |
対象とならないケース
・国民健康保険(自営業・フリーランス等)に加入している場合
・業務上・通勤途中の病気・ケガ(労災保険の対象)
・就労可能な状態にある場合
・傷病手当金の額より多い給与が支払われている場合
・老齢・退職年金を受給している場合(金額によって調整)
受給額の計算方法
傷病手当金の1日あたりの金額は、以下の計算式で求められます。
受給額シミュレーション
| 月収(目安) | 標準報酬月額 | 1日あたりの手当金 | 月あたり(30日) |
|---|---|---|---|
| 20万円 | 20万円 | 約4,444円 | 約13.3万円 |
| 25万円 | 26万円 | 約5,777円 | 約17.3万円 |
| 30万円 | 30万円 | 約6,666円 | 約20.0万円 |
| 35万円 | 36万円 | 約8,000円 | 約24.0万円 |
| 40万円 | 41万円 | 約9,111円 | 約27.3万円 |
※標準報酬月額は実際の月収と異なる場合があります。目安としてご参照ください。
最長受給額のイメージ
月収30万円の方が1年6ヶ月(18ヶ月)フルで受給した場合:
約20万円 × 18ヶ月 = 約360万円
退職後の継続受給
傷病手当金は退職後も継続して受給できますが、以下の要件をすべて満たす必要があります。
① 退職日までに健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること
② 退職日に傷病手当金を受給しているか、受給できる状態にあること
③ 退職後も引き続き働けない状態が続いていること
失業保険との同時受給
傷病手当金と失業保険(基本手当)は原則として同時に受給できません。失業保険は「働ける状態なのに仕事がない」人が対象であり、傷病手当金は「働けない状態」の人が対象だからです。
体調が回復して働ける状態になったら、傷病手当金の受給を終えてからハローワークで失業保険の手続きをします。また、傷病手当金の受給期間中は「受給期間の延長」を申請することで、失業保険の受給期間を最大3年延長できます。
申請手続きの流れ
医師に診断書・意見書を依頼
かかりつけの医師(主治医)に就労不能である旨の意見書を書いてもらいます。傷病手当金申請書の「療養担当者記入欄」に記入してもらう形式です。
申請書の入手・記入
加入している健康保険組合または協会けんぽの窓口・ホームページから「傷病手当金支給申請書」を入手します。被保険者(本人)記入欄、事業主記入欄、療養担当者記入欄の3部構成です。
勤務先に事業主欄の記入を依頼
在職中の場合は、会社の人事・総務部門に申請書の「事業主証明欄」の記入を依頼します。退職後は不要な場合もあります(保険者によって異なります)。
健康保険組合・協会けんぽへ提出
書類がそろったら、加入している保険者(健康保険組合または協会けんぽ)に申請書を提出します。原則として1〜2ヶ月ごとに申請します。
審査・振り込み
審査を経て(通常2〜4週間)、支給決定通知が届き、指定口座に振り込まれます。
メンタルヘルス・うつ病での利用
近年、うつ病・適応障害・パニック障害などのメンタルヘルス不調による傷病手当金の申請が増加しています。身体的な病気・ケガと同様に、精神疾患による就労不能状態も傷病手当金の対象となります。
メンタル疾患で申請する際の注意点
メンタル疾患の場合も、医師(精神科・心療内科)の診断と就労不能の意見書が必要です。「診断書」と「傷病手当金申請書の意見書欄」は別物ですが、主治医に依頼する際に併せてお願いするとスムーズです。
また、申請時には「療養の経過」「就労できない理由」を具体的に記載してもらうことが支給承認の確率を高めます。主治医との信頼関係を築き、症状を正確に伝えることが大切です。
職場復帰・復職との関係
傷病手当金の受給中に短時間・軽作業での復職(試し出勤)をする場合は、保険者に確認が必要です。完全復職と段階的復職では取り扱いが異なります。主治医・会社・保険者と連携して進めましょう。